NIKE FOOTBALL ACADEMY

INTERVIEW

@修徳高等学校 2025.2.14 Fri.

河内 一馬 株式会社 vennn

サッカーショップKAMOがNIKEと共に立ち上げた
『Nike FC presented by Soccer Shop KAMO』の活動の
第11回として訪れた東京都 修徳高等学校サッカー部。

“NIKE FOOTBALL ACADEMY”と題した今回の企画について、
オンピッチの講師にお招きした
河内氏にインタビューを行いました。

  • 「サッカーとは何か」を構造的に理解することができれば、それを他分野ー他領域に活かすことができる

    ーオンピッチ講義を終えて率直な感想を教えてください。

    河内: 私が体調を崩してしまったせいで現地にてお話しさせていただく予定が叶わず残念でしたが、ユース年代の選手たちと関わるのは久しぶりだったので、とても有意義な時間になりました。

    ー今回の講義の具体的な内容と目的を教えてください。

    河内: 3年前に書いた『競争闘争理論』を基に、「高校生はサッカーから何を学ぶべきか」というテーマで話をさせていただきました。
    「サッカーとは何か」を構造的に理解することができれば、それを他分野ー他領域に活かすことができます。
    自分たちが日々時間を使っているサッカーというスポーツにはどんな特性があって、例えば野球とはどういった構造の違いがあるのか。
    私の高校生の頃と同じように、理解をしていない人がほとんどだと思います。
    時間の関係上全てを話すことはできませんでしたが、高校生の間にそういった発想だけでも持って欲しいなと思っています。

    ー講義で特に意識された事はありますか?

    河内: 自分が高校生だった時や、高校生のコーチをしていた時を思い出して、できるだけ今すぐにでも何か気づきを与えるような内容にしたことです。

  • サッカー指導者の前に教育的な視点を持たなければならない

    ーオフピッチでの座学、オンピッチの実技を提供するNIKE FC presented by SOCCER SHOP KAMOの取り組みの感想をお聞き出来ますでしょうか?

    河内: 普段接することができない人や、多くの大人と関わる機会をスポーツブランドやスポーツショップが高校生に提供することは、素晴らしいことだと思いました。

    それだけでも普段とは違う刺激が高校生に入ると思うので、すごく羨ましいです。
    これからも続けて欲しいなと思いました。

    ー多くの指導をされてきましたが、指導で意識されている事を教えてください。

    河内: 私は10年ほど現場に立ちましたが、サッカーを「教える」という発想を持ったことはありませんでした。
    「選手と一緒にサッカーをつくっていく」ことをしていた感覚があります。
    選手はボールを触ることができますが、監督やコーチはボールを触ることができません。
    その代わりトレーニングを構築したり、ゲームであれば戦術的な変更で大局を変えることができます。
    あくまでも、選手とコーチはサッカーに対する役割の違いだと私は思っています。

    ー指導者として必要な素質や視点を教えてください。

    河内: 育成年代の指導者と、大人のサッカーチームの指導者では、必要な素質や視点が全く異なります。
    子どもたちと接する以上、サッカー指導者の前に教育的な視点を持たなければならないことは明らかだと思います。
    これは僕がいたアルゼンチンでも、口酸っぱく言われていたことです。
    高校生年代あれば、これから大人として年齢を上げていく選手たちに対して、サッカーに限らず様々な視点を与え、自分で歩ける土台をつくってあげることが大切なのではないかなと私は思います。

  • 指導者側が必要とされる能力や知識が変わってきている

    ー現代は科学的視点での研究やトレーニングが多くなってきていると感じます。
    これは非科学的視点とは異なりますが、どのように考えていますか?

    河内: 非科学的なトレーニングを繰り返し、身体や精神を壊してしまうユース年代の選手たちが多かったと思いますので、その点ではプラスの変化だと思います。
    ただ、「科学的」という言葉は一方ですごく危険でもあります。
    何を持って「科学的」なのか、その方法論の必要性が議論されないまま現場に出てしまうものも増えていくのだと思います。

    ー科学的視点でのトレーニングは長期的にプレーヤーや日本サッカーにどうような影響があると思いますか?

    河内: テクノロジーの進化と速度をそろえて進化していくのだと思いますが、これまでのように単純に技術を高めたり、戦術的な知恵を植え付けることに指導者が必要なくなっていくとも言えます。
    短期的に見ると、科学的なトレーニングやテクノロジーがコモディティ化することは良いことに思えますが、私はそれによって現場にいる指導者側が必要とされる能力や知識が変わってきていることに、興味を持っています。

    ーサッカープレーヤーとしての視点、指導者としての視点に違いはありますか?

    河内: 講義でも話したとおり、サッカーは第三者(コーチー審判ー観客)が勝敗に影響を与えられていることがルール上許されているスポーツです。
    それぞれにはそれぞれの役割があるので、プレーヤーと指導者では全く違う視点を持つ必要があると思っています。

    ーサッカー、スポーツの分類分けに至った経緯や分類分けの必要性を教えてください。

    河内:監督を目指すようになったタイミングで、日本がサッカーで世界の頂点に立つことができないのは「作戦ボードで説明できることや数字で示せることではないのではないか」という仮説を持ちました。
    まずは自分の視点でサッカーというゲームを理解しようと努める中で、「サッカーとは何か」を説明するためには、他のスポーツとの共通点と類似点、相違点を明らかにするのが最も適切だろうと思い、「競争闘争理論」が生まれました。
    スポーツを包括的にカテゴライズすることは思考のインフラのようなもので、そのスポーツについて考える上での出発点になると思います。
    また正しくカテゴライズできていれば、人間の研究にネズミが使えるように、サッカーの研究に他競技の知見が正しく使えるようになると思います。

  • ゲームを勝つために、また楽しむために「闘争心」が必要

    ーユース年代の闘争意識や考え方はどう感じていますか?

    河内:サッカーで「闘争」という言葉を聞くと、意味のない走り込みや暴力的なトレーニングなどに打ち勝つことや、「気持ちで闘う」のような言葉が連想されてしまいますが、それは過去の負の遺産だと思います。
    サッカーというゲームを勝つために、また楽しむために「闘争心」が必要なのは、競争闘争理論を理解するとロジカルによくわかると思います。

    ーユース年代の選手の自主性や姿勢に感じる事はありますか?

    河内:私が体験したアルゼンチンでは、良い悪いではなく、やはりユース年代の自己主張の強さが日本のそれとはまるで違ったことは事実です。
    言葉で説明するには難しい、日本の文化との違いがあるのだと思います。

    ー意識付ける為に選手に必要な事は何ですか?

    河内:全体で考えると途方もないように思いますが、日本の中でも、ユース世代で選手たちの自主性と行動力が大きく育っている組織もあると思うので、そういったところを皆で学ぶのが良いと思います。
    また少なくとも、大人が主役になってしまうような教育システムなどがなければ、選手たちは自然と自主性を発揮するようになるのかなと思います。

  • サッカーを学ぶことで、サッカーから、他の分野ー領域に活かせるところを探して欲しい

    ー日本のサッカー文化の発展に貢献する為に、選手達に何を伝えていくべきでしょうか?

    河内:自分で考えて、考えたことを、一生懸命他者に伝えようとすることが大切です。

    ー最後に、ACADEMYを通してどんな次世代のプレーヤーたちが育っていってほしいでしょうか?

    河内:私が高校生の時とは時代が大きく変わっているかと思います。
    サッカーを学ぶことで、サッカーから、他の分野ー領域に活かせるところを探して欲しいです。
    サッカーをしていた大人が、プロサッカー選手になろうが他のことをしようが、大活躍する時代を作っていって欲しいです。

OTHER INTERVIEW
 

オフピッチとオンピッチの講義の様子をレポートでお届けします。

当日のフォト&レポートはこちら